宝島のできごと

ヤギと岩に登りたい  < ① トカラヤギを飼う>

トカラヤギの子ヤギ

 

ららちゃん。トカラヤギの雌で生後3ヶ月です。
トカラ列島の在来種であるトカラヤギは小型で丈夫なのが特徴。

と言っても現在は雑種化して、純血のトカラヤギはほとんどいないそうです。
本来は白と淡いブラウンのまだら模様や、背中に黒い線があるようですが
ららちゃんはホルスタインのような白と黒。足先だけブラウンなので、トカラヤギ以外の
血も混じっていると思われます。


トカラ列島には各島に野生化したトカラヤギがいます。
多い島では300頭くらい生息しており、畑を荒らされることも。
宝島にいるのは30〜50頭と言われていますが、正確にはわかりません。
集落外で、ごくたまーに見かけるくらい。
人を見ると俊敏な動作で踵を返し、逃げていきます。そのキレのある走りはインパラのよう。

ヤギはもともと山岳地帯に生息していたので平衡感覚に優れており、
岩場や崖など急斜面もへっちゃらだそうです。
そういえば移住してから趣味で岩に登るようになったのですが、10m近いほぼ絶壁のような岩場を
母ヤギと子ヤギ2頭が、軽やかに頂上から降りているのを見かけたことがありました。


さてさて、ウチに来たららちゃん。
きっかけは昨年のこと。
道端でヤギに会うと捕まえずにはいられないという、
変わった習性をお持ちの「Hさん(50代男性)」という方が島にいます。
ある日彼が捕まえた雌ヤギを、このホームページの泥絞り染めで紹介している寿恵さんがもらって
飼い始めました。


今年4月のある朝。起きてびっくり。
子ヤギが2頭(雄と雌)、産まれていました。
実は寿恵さん宅ではもう1頭、Hさんが捕まえたヤギを飼っており
「ウチは小さい子供が3人いるし、ヤギは2頭で精いっぱいだよ〜。じゅんちゃん飼ってみない?」
と半ば冗談で言われたのが発端です。


その時は全く飼う気はなかったのですが、その後Hさんと雑談中にこの話題になり、
「もらって飼えばいいじゃないか〜」
「うーん。べつにヤギが好きってわけでもないしなあ。目とかコワイし・・(;^_^」
「ヤギは人になつくし、一緒に岩に登れるぞ」

その言葉に脳内でピッカーーーーーーン!!!(電球スイッチオン!)

ヤギと岩に登る・・・楽しそう!!!
人によくなれる・・・マジか!? かわいい!!!


すぐに寿恵さんに打診したところ、まだもらい手がなく即決定。

雄のヤギはケモノ臭がキツイと聞き、雌をもらうことにしました。


余談ですが、トカラヤギ・ハンターのHさん。
牛の畜産の仕事をしているので、牧場の行き来で集落外を車で走ることが多く、
ヤギとの遭遇率も高い。

ヤギを発見すると素早く駆け寄り、両腕でぐわしっとヤギの胴体をホールドして捕まえているそうです。

飼うわけではない。食べるわけでもない。とくに目的はないが捕まえる。
「よく分からない。見ると捕まえずにはいられない」← ご本人談。本能??( ´▽`)

そんなHさんがある時、新車の軽トラで牧場へ向かっていると、目の前に雄ヤギが現れます

いつものように必殺ボディ・ロックを仕掛けようと、走るヤギを車で追いかけるHさん。
上り坂でだんだんと体力を消耗し、スピードが落ちてきたヤギ。
「よっしゃ、あと少し!」
さらにヤギとの距離を縮めるべくアクセルを踏もうとしたところ、
突然ヤギが立ち止まりました
くるりと向きを変え、Hさんの軽トラに近づいてきます。

「え?」と思い、ブレーキを踏んで止まったHさん。
次の瞬間、ヤギは思いっきり軽トラに頭突きをし、
何事もなかったのようにスタスタと歩いて去って行ったそうです。

あっけにとられたHさん。
車のフロントからは「シューーー・・・」という音。

買ったばかりの軽トラのボンネットはべっこり凹み、
ラジエーターが壊れたそうです。
勝負はヘッドバットによる、ヤギの見事な勝利で終わりました。


話を戻しますね。
さっそく子ヤギを迎える準備です。

・名前をつける → 寿恵さんの長女もっちゃん(小2)に「らら」と命名してもらう
・小屋を用意 → トカラヤギ・ハンターHさんが、牛舎を建てた廃材で作ってくれた(表札付き)

そして、ららちゃんも引っ越す準備を開始。
生まれてからずっと母ヤギと兄弟ヤギとともに、寿恵さん宅の近くの草むらで過ごしているので
いきなりウチに連れてきては淋しかろう。
少しでも淋しさを軽減&新たな環境に慣れてもらうべく、Hさんの発案で

・ララちゃんだけ草むらから寿恵さん宅の庭へ移動
・そこにHさんが作ってくれた小屋を置く


最初の頃は鳴いていたようですが、一人暮らしにも小屋にもすぐに慣れたようです。
 


それから3週間たった6月中旬。
小屋とともにららちゃんを我が家まで連れてきました。

しゃがんで頭を撫でながら「今日からよろしくね」と言うと、
ららちゃん、小さなシッポをぱたぱた振りながら、身体をぴたっと密着させ、
おでこを私の足にすりすりしています。その後、顔を見上げて目をじーっと見つめてきます。

ぎゃー!かわいい!!

環境が変わり2日間ほど「めぇーめぇー」と鳴いている時もありましたが、
もともと人懐っこい性格なのか、すぐに仲よくなれました。

エサはうちの裏庭に猛々しいまでに生い茂っている雑草。
乾草や飼料・野菜なども与えてみましたが、あまり食べません。
どうやらヤギは、食べ物の好みも性格も個体差がかなりあるようです。

ららちゃんは葉っぱが何よりの大好物ですが、何でも食べるわけではなく
クンクン匂いを嗅いで食べるかどうかの判断をしている様子。

ヤマグワ、タブノキなどを好んで食べていましたが、ある時から
ノアサガオ(野朝顔)ブームが来たようで、こればっっかり。茎も食べています。
毎日毎日、ノアサガオ。
とうとうウチの庭のものはすべて食べつくされました。
さいわい宝島はノアサガオ天国状態で、あちこちに群生しているので在庫は尽きることがなさそうです。


島のあちこちで繁茂する野朝顔


それにしてもヤギって、とても美味しそうな音を立ててテンポよく食べる。
むしゃむしゃと言うより
さくさくさくさくさく・・・(葉)
ぽりぽりぽりぽりぽり・・・(茎)

高速で口を動かし器用に葉をつまんで、次から次へと絶え間なく食べます。
お腹がポッコリするまで食べると、座ってゆったりとくつろぎながら二度噛み(反芻)を開始。
どこか遠い眼差しで、幸せそうな表情です。


飼い始めて思うのは、
「ヤギは人とコミュニケーションを積極的にとろうとする。人が好き。」
(個体差はあるとは思いますが)

思った以上に人になつく。ある程度こちらの気持ちや雰囲気を感じ取る。淋しがりやで甘えん坊。
そうなるとこちらもさらに情がわきます。
そして、なんとなく気持ちが通じ合うようになってくる。


ヤギがこんなにも心通う動物だとは思いませんでした。
感情も細やかで、鳴き声も実に表情豊か。
お腹が空いているとき、助けてほしいとき、楽しいとき、不満なとき、そばにいてほしいとき・・・

エサを食べているときに人がいると安心するようで、そばを離れると
とたんにエサを食べるのをやめて「めぇー」と鳴き出し、追いかけてきます。


また、宝島はヤギを飼うにはとてもいい環境だということにも気づきました。
亜熱帯の日差しと雨で元気バリバリの植物が、とんでもない勢いで生い茂っている。
エサに困ることは皆無です。

獣医はいないけれど、Hさんのように牛の畜産をしている人がいるので、
牧草も飼料もワラもある。ダニや回虫駆除の薬も分けてもらえます。
下痢をしたり何かあれば、アドバイスや対処法も教えてもらえます。

集落から外に出れば人も車もめったに通らないので、
ドッグランならぬゴートラン状態。


日々の生活に新しい彩りを加えてくれたららちゃん。
まだ子供なので一緒に岩に登るのはもう少し先ですが、楽しみです (*^^*)

 

 

 

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