宝島に梅雨がやってきて、1ヶ月余りがたちました。
と言っても長雨が続いたり日がな降ることは少なく、気まぐれで降ったり止んだり晴れてみたりの、自由な梅雨空。
降る雨も憂鬱な感じはなく、陽気な音をたてて楽しそうです。
そしてこの時期、宝島にやって来るものが梅雨のほかにもうひとつ。
キョーロロロロロ・・・・・
キョーロロロロロ・・・・・
しだいにデクレッシェンドする、やや高めのよく通る声。
まわりの空気を透き通らせていく不思議な響き。
アカショウビンです。
カワセミ科の鳥で体長は27cmほど。
5月初めに飛来し、日本で繁殖して、秋になると東南アジアへ渡っていく夏鳥。
梅雨時期になるとやって来るところから、「雨を呼ぶ鳥」の異名もあります。
渡来数が少なく、深い森などに生息しているため、その姿を見ることは多くはありません。
バードウォッチャーにとって憧れの鳥です。
高い建物がなく、緑が多いからでしょうか。
宝島では集落内で見かけることも。
島には「小規模多機能ホームたから」という介護事業所があります。
所長の米倉さんは2010年に奥様とともに移住した、行動派でスポーツマンの34歳。
カンボジアの中学校での教員経験があり、島では子供たちに柔道を教えています。
今年初めには100kmマラソンに出場して、見事完走。
また、島でやる人のいなくなった米作りを復活させようと、
有志の人たちと使われなくなった田んぼを借りて稲作もしています。
最近は合鴨農法にもチャレンジ中。
つい先日、その田んぼにアカショウビンがはまっているのを
子供たちが発見しました。
身体もくちばしも泥だらけで、飛ぶのが困難な状態。
米倉さんも駆けつけ、泥を拭き取り身体を温めたら、ほどなくして飛び立っていったそうです。
日本では古くから「雨乞鳥(あまごいどり)」とも呼ばれているアカショウビンには
様々な言い伝えが残っています。
ー 前世で悪い行いをした罰として水を与えられず、喉が渇いて水を求めて鳴いている
ー カワセミが火事に遭い、真っ赤に焼けてしまった姿がアカショウビン
焼けた身体を冷やすために雨を乞うて鳴いている
どれも想像が広がっていくような切ない話。
アカショウビンの赤い色や独特の鳴き声に、哀切を重ねている。なんとはなしに日本的な趣を感じます。
一方、海外ではファイヤーバード、火の鳥と呼ばれています。
あなたはアカショウビンの色から何を連想しますか?
初めてアカショウビンを見たのは、ガジュマルが生い茂る森で枝にとまっている姿でした。
鮮やかだけど深みのあるくちばしの色。
黄金色がかった身体。
きりりとして意思が強そうな面立ち。
まんまるの瞳は強い光を放っています。
その様は火というより、太陽。
「火の鳥」と言うより「太陽の鳥」
「雨を呼ぶ鳥」と言うより「夏を呼ぶ鳥」
そんな風に感じるのは、亜熱帯で、どこか明るくのびやかな風土の宝島だからでしょうか。
本州の北方で逢ったら、まったく違うことを感じるのかもしれません。
今日も朝早くからアカショウビンの声が、明るい水色の空に響いていました。
キョーロロロロロ・・・・・
アカショウビンの声で始まる1日。
豊かな日常だな、と思います。
そして、その声を捉えるごとに夏が色濃くなっていきます。